【脈診の基本】張仲景『傷寒論』辨脈法第一(1):陰陽の脈とは?
- 行晃 松谷
- 2025年11月13日
- 読了時間: 4分
【脈診の核心】
傷寒論「辨脈法第一」陰陽の脈とは?
〜内藤希哲の教えと予後予測〜
「脈を必ず診なさい」。この老中医の教えを胸に約40年。古典『傷寒論』の「辨脈法第一」に立ち返り、難病ケアの現場で役立つ**「陰陽の脈」の真髄を東洋医学専門家**の視点から解説します。

はじめに
経方医学とは、江部洋一郎先生が傷寒論金匱瓔珞をもとに考案された医学だが、どのように鍼灸に経絡に落とし込むのか全く理解できなかった。例えば、太陽病を経絡に落とし込むとどうなんだろう。池田政一先生の経絡治療では、肺虚実熱証が基本。内藤希哲先生の『医経解惑論』の脈方論では、経脈病と臓腑病に分けて考える。傷寒論では六経弁証を行うが、それと経絡の関係が脈との関係が理解できない。
あれを読んだり、これを読んだり
頭がこんがらがる。
江戸時代もこんな思いで、内藤希哲先生は、本を書き始めたのだろうか。まずは、原典の傷寒論の原文を読む必要がありそうだ。
まずは、読んでみて、また、考えよう
宗版傷寒論辨脈法第一/1
傷寒論
林億
『傷寒論』巻第一「辨脈法第一」の各章を、【原文】、【書き下し文】、**【現代語訳】**【解説】に分けて作成します。
陰陽の脈
【原文】
問曰:脈有陰陽者,何謂也?
答曰:凡脈大、浮、數、動、滑,此名陽也;脈沈、濇、弱、弦、微,此名陰也,凡陰病見陽脈者生,陽病見陰脈者死。
【書き下し文】
問ひて曰く:脈に陰陽有(あ)りとは、何ぞ謂(い)ふや? 答へて曰く:凡(およ)そ脈、大(だい)・浮(ふ)・数(さく)・動(どう)・滑(かつ)は、此(こ)れを陽と名づく也(なり);脈、沈(ちん)・濇(しょく)・弱(じゃく)・弦(げん)・微(び)は、此れを陰と名づく也。凡そ陰病にして陽脈を見る(あらわる)者は生き、陽病にして陰脈を見る(あらわる)者は死す。
【現代語訳】
質問:脈に陰陽があるとは、どういう意味ですか?
解答:およそ脈象で、大(大きく力強い)・浮(軽く触れるだけで触れる)・数(速い)・動(拍動がはっきりしている)・滑(滑らか)なのは、これらを陽の脈と名付けます。
脈象で、沈(強く押さえないと触れない)・濇(渋るようで滑らかでない)・弱(弱い)・弦(弓の弦のようにピンと張っている)・微(非常に細く弱い)なのは、これらを陰の脈と名付けます。
およそ陰の病気(慢性、寒性、内向性の病)でありながら陽の脈が現れる者は助かる兆しがあり、陽の病気(急性、熱性、外向性の病)でありながら陰の脈が現れる者は死に至る兆しがあります。
【解説】
この章の核心は、脈診によって病の予後(生か死か)を推測できる点にあります。ここで示された「凡そ陰病にして陽脈を見る者は生き、陽病にして陰脈を見る者は死す」という法則は、病の性質(陰陽)と患者の**正気(抵抗力)**の状態(脈の陰陽)を照らし合わせる極めて重要な指標です。
陽脈(大、浮、数など)は「実・熱・正気あり」を、陰脈(沈、濇$しょく$、微など)は「虚・寒・正気衰弱」を示します。例えば、急性で熱性の陽病(例:インフルエンザなど)であるにもかかわらず、脈が沈んで微弱な陰脈が現れるのは、病に立ち向かうべき正気が急速に衰えていることを意味します。この傷寒論の教えは、40年にわたる私の臨床において、患者さんの生命力を判断する際の基本原理であり続けています。
おわりに
江部洋一郎先生の経方医学では、脈診を軽按と重按の二種類の脈の観察が要求されますが、これはまさに陰陽の脈の病態を見定めるためでしょう。しかし、「なぜそうなるのか」という原理原則に踏み込んでいるのが、内藤希哲先生の『医経解惑論』の脈方論です。
古典を読むことは、まさに推理小説を解き明かすかのようです。次回以降、この傷寒論の辨脈法の連載を通じて、より深く脈の謎に迫っていきます。
【広島・海田町の皆様へ】 当院では、この傷寒論や内藤希哲の教えに基づいた丁寧な脈診を臨床の核心とし、医学に見放された方々の難病ケアに取り組んでおります。脈に現れた微細な情報を逃さず、患者さんの予後を真摯に見極める治療を実践しております。 海田まつたに鍼灸整骨院 | 広島 鍼灸 おすすめ | 〒736-0046広島県安芸郡海田町窪町4-46, サンシャミィビル201
